経営コンサルタントとして、多くのプロジェクトに携わる中で、「成果物の納品がゴール」となりがちです。しかし、クライアント企業にとって重要なのは、納品されたアウトプットそのものではなく、そのアウトプットを活用して具体的な成果(アウトカム)を生み出すことです。
ある事業会社の役員から聞いた言葉を、私は今でも心に留めています。「プロジェクトが終わってからが本当のスタート」。この視点を持つことで、コンサルティングの価値を飛躍的に高めることができます。我々コンサルタントも、事業会社がもつ時間軸を背負って、コンサルティングをする必要性があると感じています。
時間軸を背負うコンサルティングの重要性
多くのプロジェクトでは、短期間で具体的な成果物を求められます。しかし、事業会社はその成果物をもとに長期的な意思決定や改善活動を進めます。したがって、プロジェクト期間内のアウトプットがどれだけ優れたものであっても、その後の実行プロセスや持続的な価値創出に貢献できなければ、コンサルティングの本質的な価値は発揮されません。
経営診断とアクションプラン:短期視点から長期視点へ
コンサルティングプロジェクトでよく行われるのが「経営診断」と「アクションプラン」の策定です。これらのプロセスで重要なのは、以下の3点です。
診断結果の文脈化
経営診断は、企業の現状を多角的に分析する重要なプロセスですが、その結果を単なるレポートとして提出して終わりにするのではなく、経営課題や経営方針の策定プロセスにどのように活用できるかを具体的に示すことが必要です。
実現可能なアクションプラン
アクションプランは「実行可能性」が鍵です。クライアントのリソースや文化、組織の成熟度を理解し、彼らが独力で実行できる内容に落とし込むことで、長期的な成果を生む基盤を提供します。
アフターフォローの設計
プロジェクト終了後の進捗モニタリングや、成果を測定するための指標(KPI)を設計することは、クライアントが自立的に改善を継続するために重要です。
時間軸を背負ったアプローチの実例
ケース1:事業計画策定プロジェクト
ある製造業クライアント向けに、中期経営計画の策定を支援しました。当初は3年間の計画書を作成するだけのプロジェクトでしたが、終了後にフォローアップワークショップを毎四半期開催し、計画の進捗を評価する仕組みを提案。結果として、クライアントは計画の実行率を大幅に向上させました。
ケース2:経営課題解決のための文化変革
別のクライアントでは、経営課題として「イノベーションが不足している」という診断結果が得られました。アクションプランとして、新規事業部の設置や社員のリスキリングプログラムを提案しましたが、それだけで終わりませんでした。実施後の現場インタビューや効果測定を通じて、プランを軌道修正するプロセスを継続的に支援しました。
時間軸を背負うための3つの実践ポイント
プロジェクト後のロードマップを描く
アウトプットだけでなく、プロジェクト後の具体的なステップを提示することが重要です。ロードマップを作成し、クライアントが中長期的な視点で計画を実行できるよう支援しましょう。
クライアントとの関係を育む
プロジェクト終了後も定期的な接点を持つことで、クライアントが困難に直面した際に再びあなたを頼れるようになります。メールや定期報告会を通じて、実行支援のパートナーとしてのポジションを確立しましょう。
アウトカムを重視したKPI設計
成果物の納品がゴールではなく、成果物がどのように活用され、具体的な成果に結びつくかを計測できるKPIを設計することで、クライアントとコンサルタント双方が目指すべき方向性を共有できます。
アウトカムを重視することのメリット
時間軸を背負うアプローチは、コンサルタントにとっても多くのメリットがあります。
差別化
他のコンサルティングファームとの差別化要因になります。多くの競合は短期的な成果物提供にフォーカスしがちですが、アウトカムに注力することで独自のポジショニングを築けます。
リピート案件の獲得
長期的にクライアントと関係を築くことで、リピート案件や新規プロジェクトを受注するチャンスが広がります。
クライアントとの信頼関係強化
長期的な成功にコミットすることで、クライアントからの信頼を得やすくなり、より戦略的な案件にも携われるようになります。
おわりに
経営コンサルタントは、単なるアウトプット提供者ではなく、クライアントとともに時間軸を背負い、アウトカムを追求する存在であるべきです。これにより、クライアント企業の持続的な成長を支援し、あなた自身のキャリアにも大きな価値をもたらします。
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